■トピックス  2017年

2017-11-30 日文研の話題

日文研木曜セミナー「華語における非言語情報の文字化現象―日本漫画のうちに再発見された表現形式の可能性―」を開催しました(2017年11月22日)

 「臉上三條線」(中国本土では「一脸黑线」)は、中国本土以外で用いられている標準中国語を含めた華語において、主にインターネット記事の転載などを通じて浸透し、一般化しています。これはマンガでよく用いられる顔に縦線を入れ、なんとも言えない気持ちを現した表現手法が言語化されたものです。
 今回は非言語情報による意思の疎通を重んじる日本言語文化の土壌で培われたマンガの表現手法が、中国語圏における表現形式に与える影響について「臉上三條線」を例に、小園晃司機関研究員が発表を行いました。
 
 「臉上三條線」は台湾や香港、中国本土でも人気の日本アニメ「ちびまる子ちゃん」から広まっていったと考えられています。
 本発表ではまず、台湾や中国のTVなどの演出で、「臉上三條線」が使われている事例や、小園研究員が中国の大学で、女子学生がなんとも言えない気持ちのときに、顔の横に指を三本立てて、その気持ちを現していた体験などをもとに、実際にどのように使われているかを紹介しました。
 その後、日中の「ちびまる子ちゃん」のマンガを比較すると、セリフの内容や「ぺらぺら」、「がしっ」などのオノマトペなどは文化に合わせて中国語版では変更されている、もしくは消されているのに対し、顔の三本線は残っている事について言及。マンガの表現形式である、漫符や形喩の可能性について語られました。
 最後に、近年では「臉上三條線」が言葉として定着しており、新聞記事などでも使われている事例を紹介。マンガから始まった表現手法が言語化され、一般的になっている事について考察されました。
発表の様子
発表を行う小園研究員