■トピックス  2017年

2017-09-28 日文研の話題

日文研木曜セミナー「チョコレートの喩えとしての「少女」――1930年代の森永ミルクチョコレート広告をてがかりに」を開催しました(2017年9月21日)

 1920年代、大福1つ5厘の時代には1枚10銭という高級品であったチョコレートが、30年代にかけて大衆的な菓子に近づくなかでどのように広告展開していったのか。当時、広告活動に力を入れていた森永のミルクチョコレートの事例をもとに、前川志織特任助教が発表を行いました。
 
 まず、森永ミルクチョコレートの発売当初、1920年代の広告は嗜好品の特性と栄養価の高さを謳い、同社が販売したキャラメルと同様の広告手法をもつものが多かったが、30年代になり変化していったことが述べられました。
 30年代前半では映画とのタイアップ広告が増え、チョコレートを買えば映画のチケットが貰える手法が導入されましたが、当時のチョコレートは苦く、映画館の前には多くのチョコが無残に捨てられていた状態だったこと、やがてターゲットを女学生に絞ったものが目立つようになったことが報告されました。
 その中でも多くの広告が出されていた雑誌『少女の友』を見ていくと、女性がモデルの叙情的な挿絵とともに詩的な文章を掲載したものであり、当時の広告を見ながらその推移を考察しました。
 
 発表後には稲賀副所長より、1930年代は、「もはや戦後ではない」と言われた1960年代に近い高い文化水準の時期であって、その時代の広告活動を考察することは大衆文化を考える上で非常に重要であるとのコメントがよせられ、質疑応答では、他社の製品ではどういった広告だったのかなど多くの質問があり、様々な意見が交わされました。
 
講演を行う前川特任助教
会場の様子
稲賀副所長によるコメント