■研究活動 共同研究 2014年度

日本仏教の比較思想的研究

領域 第3研究域 文化比較

 人類が大きな危機的状況を迎えている今日、従来の哲学はそのままではほとんど通用し難くなっている。それは、近代が終焉し、ポスト近代に移ったから、何か目新しいものを持ち出せばよいというだけの単純なことではない。従来の哲学のあり方を根源から問いなおし、新しい哲学を確立することが不可欠である。そのためには、従来の西洋中心的な発想を改め、他の諸文化圏の思想に目を向け、それをどのように生かすことができるかを考えなければならない。
 日本に立脚する立場からすれば、何よりもまず、日本の伝統思想を問いなおし、それを現代の状況にどのように生かせるかを検討することが必要である。すでに、いわゆる「京都学派」の哲学者をはじめとして、近代日本の哲学者たちも、日本の伝統思想や、あるいはそのもととなるアジアの思想を現代哲学に組み込む試みを行ない、大きな成果を収めている。しかし今日、彼らの成果にそのまま安住することはできない。一方で、伝統思想の研究が進んで、かつての哲学者の理解では不十分になりつつあり、他方で、時代状況が変わり、彼らの哲学自体が問い直されなければならなくなっている。本共同研究では、伝統思想全体を満遍なく扱うことは困難であるので、仏教思想に焦点を当て、他思想を含めて考えることにしたい。
 まず、中世日本仏教に関する研究が最近急速に進み、従来の常識が完全に覆されるようになってきたことが注目される。とりわけ密教を中心として、狭義の思想だけでなく、文学・歴史・美術・儀礼などさまざまな面を総合した学際的な研究が盛んになっている。そこで、本共同研究ではこの方面の専門家をメンバーに加え、その最新の成果を生かすことを目指す。
 他方、今日の哲学も従来の西洋中心主義に対する反省を進めている。とりわけ、比較思想(比較哲学)の分野は、従来の西洋哲学を基準としてそれと他思想を比べるという方法から、西洋的な偏見を排除して、異なる伝統を如何にして適切に理解できるかという問題に取り組むようになってきている。そこで、伝統思想に関心を持つ現代哲学・比較哲学の専門家をメンバーに加え、哲学的な検討を進める。
 以上のように、本共同研究は、中世日本仏教と現代哲学・比較哲学という異なる分野の専門家が一堂に集まり、相互の討論の中から、新しい現代日本思想の可能性を探りたい。
(以下の研究組織は2014年10月1日現在のものです)

研究代表者 末木文美士 国際日本文化研究センター・教授
幹事 稲賀繁美 国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 阿部仲麻呂 上智大学神学部・非常勤講師
井上克人 関西大学文学部・教授
魚住孝至 放送大学・教授
岡本貴久子 元総合研究大学院大学文化科学研究科学生
冲永宜司 帝京大学文学部・教授(副学長)
嘉指信雄 神戸大学大学院人文学研究科・教授
坂井祐円 南山大学南山宗教文化研究所・非常勤研究員
坂本慎一 株式会社PHP研究所 経営理念研究本部 研究業務部・主事
佐藤弘夫 東北大学大学院文学研究科・教授
島薗 進 上智大学神学部・特任教授
Michel Dalissier 同志社大学文学部・准教授
永井 晋 東洋大学文学部・教授
中島隆博 東京大学東洋文化研究所・教授
西平 直 京都大学大学院教育学研究科・教授
西村 玲 公益財団法人中村元東方研究所・研究員
Molly Vallor 神戸大学大学院人文学研究科・特命助教
Silvio Vita 京都外国語大学外国語学部・教授
藤田正勝 京都大学大学院総合生存学館・教授
前川健一 公益財団法人東洋哲学研究所・研究員
吉永進一 舞鶴工業高等専門学校・准教授
米田真理子 神戸学院大学法学部・准教授
阿部泰郎 国際日本文化研究センター・客員教授 / 名古屋大学大学院文学研究科・教授
滝澤修身 国際日本文化研究センター・客員教授 / 長崎純心大学人文学部・教授
Ranjana Mukhopadhyaya 国際日本文化研究センター・外国人研究員 / デリー大学・准教授
Anton Sevilla 総合研究大学院大学文化科学研究科・博士後期課程
高橋勝幸 総合研究大学院大学文化科学研究科・研究生
海外共同研究員 James Mark Shields バックネル大学(アメリカ)・准教授
Anna Andreeva ハイデルベルク大学(ドイツ)・リサーチフェロー
許 祐盛 慶煕大学校(韓国)・教授
鄭 灐 檀国大学校(韓国)・教授