■研究活動 共同研究 2012年度

万国博覧会とアジア

領域 第四研究域 文化関係

万国博覧会は、その開催の政治的背景から、巨大な催しとしてのそれ自体、そこに展示される個々の出品物や、訪れた見学者の動向に至るまで、あらゆる要素が着目点となりうる研究テーマのるつぼであり、日本においてはとくに1980年代以来、魅力ある学際的テーマとして多くの研究者を惹きつけてきた。しかし、その視野は「日本と」万国博覧会のかかわり方にとどまる場合がほとんどであり、論点の比較、共有が可能であるはずのアジア諸国の状況には、十分な注意が払われてこなかったのではないか。 本研究会では、そのような問題意識に基づき、万国博覧会をめぐるさまざまな論点――19世紀から今日に至る異文化展示の手法の変遷、各国の近代化過程における博覧会の役割、また、経済、産業、都市政策はもとより、文化政策との関連における万博開催の功罪など――を整理しつつ、アジア諸国間の比較の文脈の中に置き直していく。そうした視角を持つことによって、既存の研究の位置を互いに相対化するとともに、そこに立ち現れる万博研究の新たな意義を確認し、より長期的な研究計画の立案につなげることが主要な目的である。同時にこの試みは、万博研究そのものにとどまらず、日本について深く詳細に知ろうとする日本研究・比較研究を超えて、日本の位置を相対化した、いわば世界史の一角としての日本研究のあり方を模索するための、一つのステップともなるであろう。 共同研究会としての活動にあたっては、万博をめぐる歴史研究と現代社会的研究を分断せず、連続的に取り扱っていくこと、また、万国博覧会ならではの、学術的研究と政策実践の交錯する場としての性格を重視し、現実社会への還元力を持った研究をめざすことを、とくに意識して進めたいと考えている。2005年の愛地球博、2010年の上海万博、2012年麗水万博と、東アジアでの開催が連続することで、中国や韓国において若手研究者による万博研究が盛んになるなか、日本での万博研究もいっそう深めるべき段階にあり、それを通じたアジア諸国間の交流も視野に入れていきたい。

研究代表者 佐野 真由子 国際日本文化研究センター・准教授
幹事 劉 建輝 国際日本文化研究センター・准教授
共同研究員 石川 敦子 ㈱乃村工藝社・チーフ
市川 文彦 関西学院大学・教授
伊藤 奈保子 広島大学大学院文学研究科・准教授
岩田 泰 経済産業省博覧会推進室・室長
鵜飼 敦子 東京大学東洋文化研究所・特任研究員
江原 規由 (財)国際貿易投資研究所・研究主幹
川口 幸也 立教大学文学部・教授
神田 孝治 和歌山大学観光学部・准教授
中牧 弘允 国立民族学博物館名誉教授
芳賀 徹 国際日本文化研究センター名誉教授/東京大学名楊教授
橋爪 紳也 大阪府立大学・教授
林 洋子 京都造形芸術大学・准教授
武藤 秀太郎 新潟大学人文社会・教育科学系・准教授
稲賀 繁美 国際日本文化研究センター・教授
井上 章一 国際日本文化研究センター・教授
瀧井 一博 国際日本文化研究センター・准教授
Wybe KUITERT 国際日本文化研究センター・外国人研究員
朴 美貞 国際日本文化研究センター・機関研究員
海外共同研究員 青木 信夫 天津大学・教授
徐 蘇斌 天津大学・教授