■研究活動 共同研究 2011年度

東アジア近現代における知的交流-概念編成を中心に

領域 第五研究域 文化情報

東アジアにおいては、文化のグロバーリゼイションや地球環境問題など、21世紀に対応しうるように知のシステムを根本的に再編することが問われている。各国それぞれにちがいをもつが、それらの基盤をなしたのは、19世紀半ばに西洋文化を受け入れ、伝統的なシステムの近代的再編にいち早く着手し、ヨーロッパやアメリカとは相対的に独自なものを形づくった日本の制度が、台湾、朝鮮、中国大陸に伝播していったものである。 顕著な例として、大学の学部編成に示される知的システムにおいて、宗教の占める位置をあげることができる。19世紀のヨーロッパの標準では、キリスト教神学に付随して宗教学が置かれ、人文社会科学および自然科学は基本的に別領域とする知的システムがつくられていた。だが、日本においては、神学部にあたるものはつくらず、国立大学文学部の哲学科内に宗教学科が置かれた。また、19世紀半ばのイギリスにおいて成立した工学を、世界にはるかに先駆けて総合大学の一学部として組み込んだ。これらには様ざまな歴史的文化的条件が働いているが、この編成は20世紀を通じて東アジアに共有されていった。 このような東アジアに独自な知的近代化の様相は、受け入れた「西洋」文化の要素と、それを受けとめた「伝統」的要素、そして歴史的条件、近代化を推進した価値観を検討することによって、はじめて明らかにしうる。それらが、どのような結果を生み、今日に至っているのかの再検討が、東アジアの将来を展望する上で、不可欠である。とりわけ、工業化にともなう社会問題の発生、都市の膨張、森林の大規模伐採による洪水の多発、公害などの近代化の弊害を乗りこえ、克服しようとしてきた様ざまな営みも再検討することが、今日、問われているだろう。 日文研では、すでに6年にわたって、この目標を掲げた共同研究、国際シンポジウムなどを展開してきたが、知的システムの根幹をなす諸概念とその組織(編成)のあり方への関心は、東アジアで急速に高まっている。これまでの成果を集約し、第二次大戦後の検討をふくめ、今日、ありうべき知的システムの構築に資する国際的研究の機運を高め、展開することが本共同研究の目的である。

研究代表者 鈴木 貞美 国際日本文化研究センター・教授
幹事 伊東 貴之 国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 浅岡 邦雄 中京大学文学部・准教授
阿毛 久芳 都留文科大学文学部・教授
荒川 清秀 愛知大学国際コミュニケーション学部・教授
荒木 正純 白百合女子大学文学部・教授
有馬 学 九州大学名誉教授
磯部 敦 奈良女子大学文学部・准教授
井上 健 東京大学大学院総合文化研究科・教授
今村 忠純 大妻女子大学比較文化学部・教授
岩月 純一 東京大学大学院総合文化研究科・准教授
王 暁葵 愛知県立大学多文化共生研究所・客員共同研究員
岡田 建志 静岡文化芸術大学文化政策学部・准教授
梶山 雅史 岐阜女子大学文化創造学部・教授
金子 務 大阪府立大学名誉教授
上垣外 憲一 大手前大学総合文化学部・教授
川島 真   東京大学大学院総合文化研究科・准教授
川尻 文彦 愛知県立大学外国語学部中国学科・准教授
衣笠 正晃 法政大学・教授
木村 直恵 学習院女子大学国際文化交流学部・准教授
権藤 愛順 甲南大学文学部・非常勤講師
佐藤 一樹 二松学舎大学国際政治経済学部・教授
佐藤 バーバラ 成蹊大学文学部・非常勤講師
澤田 晴美 群馬県立女子大学・非常勤講師
全 美星 神戸大学大学院人文学研究科・講師
須藤 遙子 愛知県立芸術大学・非常勤講師
孫 安石 神奈川大学外国語学部・教授
孫 江 静岡文化芸術大学文化政策学部・教授
高柳 信夫 学習院大学外国語教育研究センター・教授
竹村 民郎 元大阪産業大学教授
竹本 寛秋 北海道大学高等教育推進機構科学技術コミュニケーション教育研究部門・特任助教
田中 比呂志 東京学芸大学教育学部・教授
陳 継東 青山学院大学国際政治経済学部・教授
陳 捷 国文学研究資料館研究部・准教授
陳 力衛 成城大学経済学部・教授
寺澤 行忠 慶應義塾大学名誉教授
十重田 裕一 早稲田大学文学学術院・教授
中川 成美 立命館大学文学部・教授
中嶋 隆 早稲田大学教育・総合科学学術院・教授
野網 摩利子 国文学研究資料館・助教
橋本 行洋 花園大学文学部・教授
林 正子 岐阜大学地域科学部・教授
兵藤 裕己 学習院大学文学部・教授
平野 健一郎 アジア歴史資料センター・センター長
福井 純子 立命館大学・非常勤講師
増田 周子 関西大学文学部・教授
松田 清 京都大学大学院人間・環境学研究科・教授
真鍋 昌賢 北九州市立大学文学部・准教授
村田 雄二郎 東京大学大学院総合文化研究科・教授
目野 由希 国士舘大学体育学部・講師
リース・モートン 東京工業大学外国語研究教育センター・教授
茂木 敏夫 東京女子大学現代教養学部・教授
安田 敏朗 一橋大学大学院言語社会研究科・准教授
安野 一之 元日文研技術補佐員
八耳 俊文 青山学院女子短期大学・教授
山本 美紀 環太平洋大学次世代教育学部乳幼児教育学科・准教授
吉岡 亮 苫小牧工業高等専門学校・准教授
李 梁 弘前大学人文学部・教授
小谷野 敦 比較文学者
星野 靖二 国学院大学研究開発推進機構日本文化研究所・助教
多田 伊織 国際日本文化研究センター・客員准教授 / 京都大学人文科学研究所・非常勤講師
依岡 隆児 国際日本文化研究センター・客員教授 / 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部・教授
稲賀 繁美 国際日本文化研究センター・教授
劉 建輝 国際日本文化研究センター・准教授
小松 和彦 国際日本文化研究センター・教授
磯前 順一 国際日本文化研究センター・准教授
Frederik CRYNS 国際日本文化研究センター・准教授
郭 南燕 国際日本文化研究センター・准教授
堀 まどか 国際日本文化研究センター・機関研究員
金 哲 国際日本文化研究センター・外国人研究員
韓 東育 国際日本文化研究センター・外国人研究員
海外共同研究員 馮 天瑜 武漢大学中国伝統文化研究中心・教授
黄 克武 台湾中央研究院近代史研究所・教授
麻 国慶 中山大学人類学系・教授
章 清 復旦大学歴史学系・教授
王 中忱 清華大学人文社会科学学院・教授