■研究活動 共同研究 2010年度
植民地帝国日本における支配と地域社会
領域 第三研究域 文化比較
本共同研究は、研究代表者(松田)が行った共同研究「日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚」(2004~2006年度に行われた)を継承発展させつつ、その視座を各植民地の地域社会により密着した方向に展開することを企図したものである。 「日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚」において、共同研究員の関心がもっとも集中したのは、植民地官庁の各部門における個別具体的な官僚(あるいは官僚群)のプロフィールと政策構想という問題だった。その結果、法務・財務・土木・技術・逓信・警察・教育・鉄道・宗教など多様な分野に即して、どのような官僚がいかなる政策思想をもち、それがどのように実際の政策に結びついていたかについて、多くの事実を明らかにすることができた。しかし反面、官僚によって導入された政策が現地社会とどのように切り結んだのか、という問題には十分に切りこむことができなかった。このような反省から今次の共同研究「植民地帝国日本における支配と地域社会」では、支配政策の実施過程において、現地の朝鮮人・台湾人あるいは在住日本人などからどのような抵抗・非協力・協調などの反応が生じたのか、という局面に視点を下降させることを企図している。 本研究の設定している対象は、近年の植民地史研究において活発に論議されている諸理論と多くの接点をもつ。たとえば、権力による規律の内面化のような負の側面から近代を捉えようという問題意識に発し、近年の植民地史研究に影響を及ぼしている「植民地近代(Colonial Modernity)論」(鄭根植・松本武祝ら)、官僚の支配政策の実施と朝鮮地域社会の間に両者を媒介した「有志」の存在を措定しようとする「官僚―有志支配体制論」(池秀傑ら)などは、いずれも植民地権力と現地社会の関係性に着目した議論ということができる。ただし、本研究は特定の理論に立って歴史を跡づけようとする立場からは一線を画したい。こうしたさまざまな視角の採るべき点はとり入れつつも、実事求是によって、特定の理論からはこぼれ落ちてしまいがちな事象をも拾い上げていくことが本研究のスタンスである。 このような研究によって、共同研究「日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚」を補完し、植民地社会を立体的に捉えるとともに、植民地支配政策と現地社会の間の政治空間において生じた多様な関係をすくい上げることをねらいとしている。
研究代表者 | 松田 利彦 | 国際日本文化研究センター・准教授 |
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幹事 | Markus RÜTTERMANN | 国際日本文化研究センター・准教授 |
共同研究員 | 青野 正明 | 桃山学院大学国際教養学部・教授 |
〃 | 庵逧 由香 | 立命館大学文学部・准教授 |
〃 | 李 鐘旼 | 中央大学総合政策学部・兼任講師 |
〃 | 李 昇燁 | 京都大学人文科学研究所・助教 |
〃 | 板垣 竜太 | 同志社大学社会学部・准教授 |
〃 | 梅森 直之 | 早稲田大学政治経済学術院・教授 |
〃 | 大浜 郁子 | 琉球大学法文学部・講師 |
〃 | 小川原 宏幸 | 明治大学文学部・兼任講師 |
〃 | 金 貞蘭 | 神戸大学大学院人文学研究科・博士課程 |
〃 | 胎中 千鶴 | 目白大学外国語学部・教授 |
〃 | 崔 眞善 | 滋賀県立大学大学院人間文化研究科・博士後期課程 |
〃 | 陳 宛妤 | 京都大学大学院法学研究科・博士後期課程 |
〃 | 長沢 一恵 | 奈良大学・非常勤講師 |
〃 | 永島 広紀 | 佐賀大学文化教育学部・准教授 |
〃 | 野口 真広 | 早稲田大学アジア研究機構アジア研究所・客員研究員 |
〃 | James C. BAXTER | 桜美林大学国際戦略本部国際交流センター・教授 |
〃 | 春山 明哲 | 早稲田大学台湾研究所・客員上級研究員 |
〃 | 樋口 雄一 | 特定非営利活動法人高麗博物館・館長 |
〃 | 藤永 壯 | 大阪産業大学人間環境学部・教授 |
〃 | 水野 直樹 | 京都大学人文科学研究所・教授 |
〃 | 宮崎 聖子 | 福岡女子大学文学部・准教授 |
〃 | 瀧井 一博 | 国際日本文化研究センター・准教授 |
〃 | 劉 建輝 | 国際日本文化研究センター・准教授 |
〃 | 李 相燦 | 国際日本文化研究センター・外国人研究員 |
海外共同研究員 | 田中 隆一 | 東亜大学校・招へい教授 |
〃 | 福井 譲 | 仁済大学校人文社会科学大学日語文学科・専任講師 |
〃 | 李 炯植 | 国民大学日本学研究所・専任研究員 |
〃 | 陳 姃湲 | 中央研究院台湾史研究所・副研究員 |