■研究活動 共同研究 2008年度

戦後政治・外交政策の検証と再定義

領域 第一研究域 動態研究

本研究では、戦後日本の政治・外交の主要課題に対して考案され、実施された政策を、歴史的・国際的視野のもとで再検討・評価することを試みる。また、現代の日本が直面している外交・内政課題に関して提起されている政策と政策論を、国際政治・経済学や外交史研究者を中心とした学際的な国際比較の俎上に載せる。政策と政策論の批判的検討進めながら、その根底にある思想的課題の摘出にまで深めることによって、現代日本の政治と社会を、その抱える問題と選択肢を通じて再定義することを試みる。 検討の対象となる分野は概ね以下の6つの分野である。(1)安全保障政策、(2)東アジア政策、(3)国連政策、(4)中東政策、(5)行財政政策、(6)文化政策。 (1)安全保障政策の再検討は、戦後日米関係の検証と評価に他ならない。日米安保条約を歴史的、国際的に検討し、相対化してとらえなおす作業を中心にする。日米安保条約に大きく依存した戦後の安全保障体制が、日本政治・経済・社会・文化の諸側面に及ぼした影響について検討したい。そして、戦後の平和主義・非軍事主義の中核にある非核主義の思想と政治を検証することも必要である。それによって、現在の国際政治において主要な課題となっている北朝鮮やイランの核兵器開発問題、核拡散問題への日本の姿勢と対応を検討・評価し提言することが可能となる。 (2)東アジア政策は、対米政策と並んで戦後日本外交政策の主要な柱である。長く深い文化的関係を持つ中国・朝鮮半島との国際関係・文化交流は、国際的な視野からの日本政治・文化研究の主要課題であることは言を俟たない。また、東南アジアを含んだより広い東アジアとの関係は、日本思想史においてはアイデンティティの問題と深く関わっており、しばしば反米の対外政策論にも根底で直結する。「脱亜入欧」と「アジア主義」のせめぎ合う日本近代思想史の再検討を行っていく。 (3)国連政策は、日米関係と対東アジア関係とならぶ日本外交の柱であるが、必ずしも学問的な検討が深められてきたわけではない。国連において日本が果している役割の実態を検証・評価し、将来の課題を特定したい。 (4)中東政策は、日本にとってもっとも遠く、不得手な分野とみなされているが、同時に、日本にとって歴史問題や脱植民地の問題が絡んでおらず、独自の立場や政策を採用しうる領域とも期待される。中東和平への日本の関与や、対テロリズム政策において日本がなしうる独自の貢献といった各論を検討していく。 (5)国際社会における日本は、軍事力や政治的影響力、また文化的な知名度よりも先に、何よりも経済大国である。その日本が抱えた金融・行財政の課題は、その政策的対処の結果如何によっては世界経済に影響を及ぼすと共に、その政策そのものが注目を集める。日本の金融・行財政における問題の適切な把握と共に、それに対する政策の国際的な意義を再定義していきたい。 (6)文化政策   戦後日本の対外的、国内的なアイデンティティの確立・再確立において、いかなる文化政策が採用されてきたか、その帰結を検討したい。また、軍事力を誇示しない平和主義的対外政策を基調とする戦後日本外交において、文化外交は数少ない手法として重視されてきたが、その内実や効果を検証しておく必要がある。近年に重視される「文明間対話」の政策に関しても、その成否を自由な立場から検討していきたい。 上記の諸点を中心とした政治外交の政策・政策論の検討を国際的な視野で行う際に、副産物として、諸外国の対日政策・政策論の検討も行っていく。共同研究員の持つ、中国・東南アジア・米国・中東といった幅広いネットワークと知見を結集し、世界各国の日本政治・経済研究の動向の把握、主要な拠点の特定、対日政策の作成過程やメディア上の日本報道といった諸点を検討し、諸外国の日本を対象とした政策と政策論の形成過程に関する情報を集積したい。