■研究活動 共同研究 2006年度
日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚
本研究は、戦前日本の植民地支配の実務を担った官僚について、その制度・動態・政策への影響などを総合的に研究しようとするものである。植民地統治の動向に影響を及ぼした支配者側のファクターとしては、現地の総督及び軍指導者と植民地官僚、入植日本人、本国の藩閥・政党・軍部等の諸勢力などを想定できようが、その中で植民地統治を実地に担った官僚群については、今なおまとまった研究が存在しない。 植民地支配の研究は、相互に連関するいくつかの問題群を含んでいる。第一に、植民地官僚を制度面から明らかにすることである。植民地官僚層の人事・組織・動態を規定していた制度的基盤には従来ほとんど関心が払われてこなかったが、例えば、当時の朝鮮総督府は当時の日本のいかなる官庁をもしのぐ規模の官僚を抱えていた事実に鑑みるとき、基礎的な問題として解明する必要を感じる。 第二に、政策決定への影響という政策史の次元からの研究である。前述のように植民地官庁が大量の官僚を抱えていたことは諸外国の植民地支配と比較しても日本の植民地支配の特徴をなしていた。このように大量の官僚を送り込み、徹底的な末端支配を貫徹させようとするスタイルが日本植民地主義の特徴として認められる以上、官僚の政策決定への影響は重要な研究課題となろう。 第三に、植民地独自の問題として、日本人官僚のみならず現地民族が(特に朝鮮の場合)一定の比率で植民地支配機構に編入されていた点に目を向けなければならない。韓国では、「親日派」研究の一環として朝鮮人官僚についての関心が高まっている。また、それらの研究の蓄積に立ち、単なる「民族の裏切り者」という糾弾を超えた視角も模索されはじめ、例えば、日本による植民地支配の矛盾の一面をもっとも象徴的に体現する存在として現地人官僚を把握しようという議論も現れている。また、彼らの動向は、脱植民地化後の国家建設とも密接に関わる。 以上のように多面的で複雑な問題が想定される研究課題に対し、本研究は様々な分野の研究者がそれぞれの立場からアプローチする共同研究によって解明を進めようとするものである。
班員 | 松田 利彦 | 国際日本文化研究センター・助教授 |
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〃 | マルクス・リュッターマン | 国際日本文化研究センター研究部・助教授 |
〃 | 青野 正明 | 桃山学院大学文学部・教授 |
〃 | 浅井 良純 | 天理大学・同志社大学・非常勤講師 |
〃 | 大浜 郁子 | 法政大学・兼任講師 |
〃 | 河合 和男 | 奈良産業大学経済学部・教授 |
〃 | 川嵜 陽 | 京都大学大学院文学研究科・博士後期課程 |
〃 | 河原林直人 | 名古屋学院大学経済学部・専任講師 |
〃 | 木村 健二 | 下関市立大学経済学部・教授 |
〃 | 通堂あゆみ | 東京大学大学院人文社会系研究科・博士後期課程 |
〃 | 永井 和 | 京都大学大学院文学研究科・教授 |
〃 | 野口 真広 | 早稲田大学政治経済学術院・研究員 |
〃 | 橋谷 弘 | 東京経済大学経済学部・教授 |
〃 | 浜口 裕子 | 拓殖大学政経学部・教授 |
〃 | 廣岡 浄進 | 大阪大学大学院文学研究科・博士後期課程 |
〃 | 広瀬 貞三 | 福岡大学人文学部・教授 |
〃 | 福井 譲 | 広島大学大学院国際協力研究科・博士後期課程 |
〃 | 堀添伸一郎 | 滋賀県立大学大学院人間研究科・博士後期課程 |
〃 | 水野 直樹 | 京都大学人文科学研究所・教授 |
〃 | 三谷 憲正 | 佛教大学文学部・教授 |
〃 | 山田 敦 | 名古屋市立大学大学院人間文化研究科・助教授 |
〃 | 李 昇燁 | 京都大学人文科学研究所・助手 |
〃 | 李 炯植 | 東京大学大学院人文社会学系研究科・博士後期課程 |
〃 | ジェームズ・バクスター | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
〃 | 劉 建輝 | 国際日本文化研究センター研究部・助教授 |