■研究活動 共同研究 2005年度
前近代東アジア三国の交流と文化的波長
今日は地球を一つの単位とした経済及び文化交流の世界化が加速化され、地球村とも呼ばれる時期である。従って、東アジアの中国・日本・韓国・の三カ国の友好と関係強化はかつてない切実な問題として顕在化している。東アジアの文明圏を成してきた三国間には早い時期から交流と相互影響のもとで、各々の民族文化が形成され、これを基盤に東アジア文明圏を構築してきた。このような文化交流の伝統を持つ一方、三国の間には軋轢と反目の時期があったのも事実である。しかし、今日はそういう暗い時期を乗り越え、新たな協力と友好のために、生産的で建設的な新しいパラダイムの構築が要求される時期である。 本研究会は、このような認識に基づいて前近代における東アジア三国間の交流や、その交流を通した文明的波長を、またその中で形成された各国のアイデンティティーを究明することを目的としている。周知の如き、従来、このような問題に関する研究が決してなかったわけではない。しかし、先行研究の多くが一国中心か、あるいは両国間の交流にとどまっていることも事実である。本研究は東アジア三国の総体的かつ有機体的な側面に着目しながら、国際的・学際的研究を通じて東アジアの普遍性と特殊性を探ると共に、各国の文化的な特性をより客観的な立場で究明しようとする試みである。また、多文化をめぐる相対主義的な理解と認識についても検討を加える予定である。 本研究課題は前近代中国的な秩序の下で、東アジア三国間の文化交流と相互影響に着目し、「朝鮮通信使」と「燕行使」の考察を通じて三国間は勿論、世界に向けた文化的アイデンティティーを探ってみようとするものである。朝鮮は地政学的特性のみではなく文化的事績をみても、隣接している日本と中国に対して文化的仲介者・発信者の役割を果たしてきた。従って、東アジア三国の間には漢陽と江戸、漢陽と北京をつなぐ直接的なホットラインが構築されており、これを通じて自国のアイデンティティーは勿論、国際的な情報や感覚、他文化に対する相互理解の幅を広げた相対主義的認識も形成されるようなった。 「朝鮮通信使」や「燕行使」は、約250年にわたって日本と中国に派遣されており、彼らが残した記録は膨大な量に登る。のみならず、日本と中国側の資料も相当の量に達していると思われる。しかし、これらの資料は各地に散在しており、総合的な整理作業が緊急を要している。これらの資料には詩文学・儒学・仏教・絵画・漢方医学・本草学・西学・自然科学・幾何学・交易・大衆文化などと、人や物の交流をめぐる事象がたくさん盛り込まれている。これらを総合的にまとめ、学際的な観点から事象と人物に同時に照明あてることによって、三国間の文化的・文明的交流やそれぞれのアイデンティティー問題等をより明確にすることが出来よう。従来、東アジアの前近代を閉鎖的な鎖国の時代とみなした研究者が多かった。しかし、この地域では東アジアの文明圏ともいえる高度の文明と国際化が三国の間には勿論、西欧世界に対しても成立していた。 本研究課題が進んでいくと、東アジア全体の人文学の位相と共に、都市文明や国際化の様相も同時に明らかになるだろう。これは学術界は勿論、一般社会人の教養のためにもよい指針となることが期待される。特に東アジアの友好と協力がことさら重要度を増し今日において、新たな認識のパラダイムのためにも、この課題が与える波及効果は非常に大きいと思われる。 ※ 研究テーマは次のとおりである。 一. 東アジアの文明と都市文化 一. 明・清の詩論と朝・日詩壇の開花 一. 朱子学の開花とその変容 一. 漢方医学と本草学 一. 絵画受容と教養化 一. 東アジアにおける西欧文化の受容と知的変容 一. 漢文学の燗熟と自国文学への覚醒 一. 宗教思想の多様化と相互影響 一. 渡海船と航海術 一. 芸能文化の相互伝播
代表者 | 崔 博光 | 韓国成均館大学校国際日本文化研究センター研究部・教授客員外国人研究員 |
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幹事 | 劉 建輝 | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
班員 | 安 大玉 | 東京大学大学院人文社会系研究科・助手 |
〃 | 李 元植 | 元近畿大学文芸学部教授 |
〃 | 石川 了 | 大妻女子大学文学部・教授 |
〃 | 井上 健 | 東京大学大学院総合文化研究科・教授 |
〃 | 厳 基珠 | 専修大学ネットワーク情報学部・助教授 |
〃 | 上垣外憲一 | 帝塚山学院大学文学部・教授 |
〃 | 川原 秀城 | 東京大学大学院人文社会系研究科・教授 |
〃 | 川本 皓嗣 | 大手前大学・学長 |
〃 | 姜 在彦 | 花園大学・名誉教授 |
〃 | 姜 東燁 | 天理大学・客員教授 |
〃 | 許 聖一 | 大阪市立大学・非常勤講師 |
〃 | 黒住 眞 | 東京大学大学院総合文化研究科・教授 |
〃 | 古田島洋介 | 明星大学日本文化学部・教授 |
〃 | 小島 康敬 | 国際基督教大学教養学部・教授 |
〃 | 小宮 彰 | 東京女子大学文理学部・教授 |
〃 | 齋藤 希史 | 東京大学大学院総合文化研究科・助教授 |
〃 | 佐野真由子 | 静岡文化芸術学部・専任講師 |
〃 | 管 宗次 | 武庫川女子大学・教授 |
〃 | 菅原 克也 | 東京大学大学院総合文化研究科・助教授 |
〃 | 高 翔龍 | 大東文化大学大学院法務研究科・教授 |
〃 | 杉下 元明 | 東海大学・非常勤講師 |
〃 | 杉田 英昭 | 神戸大学海事科学部・教授 |
〃 | 竹内 信夫 | 東京大学大学院総合文化研究科・教授 |
〃 | 竹村 民郎 | 元大阪産業大学客員教授 |
〃 | 徳盛 誠 | 東京大学大学院総合文化研究科・講師 |
〃 | 高橋 博巳 | 金城学院大学文学部・教授 |
〃 | 仲尾 宏 | 京都造形芸術大学・教授 |
〃 | 長森 美信 | 天理大学国際学部・専任講師 |
〃 | 芳賀 徹 | 京都造形芸術大学・学長 |
〃 | 朴 鍾祐 | 神戸大学留学生センター・助教授 |
〃 | 花田富二夫 | 大妻女子大学比較文化学部・教授 |
〃 | 羽生 紀子 | 武庫川女子大学短期大学部・講師 |
〃 | 濱下 武志 | 京都大学東南アジア研究所・教授 |
〃 | 浜下 昌宏 | 神戸女学院大学文学部・教授 |
〃 | 平川 祐弘 | 大手前大学大学院・特認教授 |
〃 | 平木 實 | 京都府立大学文学部・非常勤講師 |
〃 | 許 芝銀 | 京都造形芸術大学・外国人研究員 |
〃 | 真柳 誠 | 茨城大学大学院人文科学研究科・教授 |
〃 | 松田 清 | 京都大学大学院人間環境学研究科・教授 |
〃 | 水戸部浩子 | 荘内日報社・論説委員 |
〃 | 吉田 宏志 | 京都府立大学・名誉教授 |
〃 | 李 岩 | 國學院大学大学院・客員研究員 |
〃 | 笠谷和比古 | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
〃 | 早川 聞多 | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
〃 | 稲賀 繁美 | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
〃 | 井上 章一 | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
〃 | 白幡洋三郎 | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
〃 | 鈴木 貞美 | 国際日本文化研究センター研究部・教授 |
〃 | 加藤 祐三 | 横浜市立大学国際日本文化研究センター研究部・教授 客員教授 |
〃 | 金 容儀 | 国際日本文化研究センター・客員外国人研究員 |
〃 | 魯 成煥 | 国際日本文化研究センター・外国人来訪研究員 |