■研究活動 共同研究 1989年度

日本文学と「私」

日本文学における「私」の問題を様々な角度から探る。例えば、作者が作中に「私」として登場する場合があり、私小説や日記などがその例と思われる。これはしばしば日本独特の形式だといわれるが、しかしその時に本当に私小説の「私」は作者なのか、日記といいながら文学としてこれを見るとき、「私」は私でありうるのか、本当に日本独自なのかという問題がある。  また、和歌や俳句などで想定できる主語が「われ」である時、その「われ」と作者はどうかかわっているのか、表現上の「われ」の問題もある。さらに連歌、俳句の座における連衆の中で、個人はどう位置づけられているのかも問題となる。  また日本人における「私」とは広くアジアや欧米の概念の何に当たるのか、egoということばとどう関係するのか、そしてこれが日本の近代化のなかでどう処理されたかも問われるべき論点である。当共同研究ではこうした「私」をめぐる諸点をむしろ無限定に論じ合い、日本人における「私」を文字の中に探り、日本文化の特質の一端を考える。

代表者 中西  進 国際日本文化研究センター
幹事 上垣外憲一 国際日本文化研究センター
班員 犬飼 公之 宮城学院女子大学
小松 和彦 大阪大学文学部
佐伯 彰一 中央大学文学部
坂部  惠 東京大学文学部
夏   剛 京都工芸繊維大学工芸学部
鈴木 孝夫 慶應義塾大学言語文化研究所
田代慶一郎 筑波大学文芸・言語学系
夛田道太郎 明治学院大学国際学部
ニコラス ジョン ティール 同志社女子大学学芸学部
野口 武彦 神戸大学文学部
満谷 マーガレット 東京工業大学工学部
光田 和伸 武庫川女子大学文学部
持田 公子 東京造形大学造形学部
モリス J.オーガスティン 関西大学文学部
山田 有策 東京学芸大学教育学部
村井 康彦 国際日本文化研究センター
杉本秀太郎 国際日本文化研究センター
早川 聞多 国際日本文化研究センター
ロイヤル タイラー 国際日本文化研究センター
上野千鶴子 国際日本文化研究センター
イアン ヒデオ リービ 国際日本文化研究センター