■イベント 学術講演会

2015年6月10日 第59回    学術講演会

挨拶
小松 和彦   国際日本文化研究センター  所長   
司会
稲賀 繁美   国際日本文化研究センター  教授   
講演Ⅰ
『オランダ商館長の将軍謁見』
フレデリック クレインス   国際日本文化研究センター  准教授
(講演要旨)
 一六〇九年にオランダ東インド会社の船がはじめて日本に到着した際に、ニコラス・ポイクの使節が駿府において家康に謁見した。それ以降、東インド会社の職員、とりわけオランダ商館長による江戸参府および将軍への謁見はほぼ毎年の慣例行事となった。本講演では、現存している出島のオランダ商館長日記における将軍謁見関連記述を分析することによって、江戸参府に対して歴代オランダ商館長が取った対応の意味とその根底にある考え方を紐解いていく。    
講演Ⅱ
あめまるいか平たいか』
―地動説理論と佐田介石かいせき(1818-82)との格闘―
マルクス リュッターマン   国際日本文化研究センター  准教授
(講演要旨)
  旧きイソポ物語の中天文学者が星を仰いで、躓いて倒れた。助けに駈けて来た市民が曰く。「君は天を読んで知りたいといえども、終に地上のことを見過ごす輩かな」と。天は球いか、平たいか。こうして好奇心を遥か彼方へ発することは、いかでか用に立つか。利を目指すのか、理を極めるのか、いずれにも両立させるのか。近代天文学も仮説を立てているように、天の形を探れば、かえってもっとも形而上の答えが期待されてつづけてきた東西南北の天道がすなわち人道をさすのである。遥か彼方の有形無形を仰いで、感覚(経験、実験)を頼りにしても、データのみでは理論にならない。カントを始め、形而上学と天文学との接点にて、理論というものが誕生し、またとない視野拡大を可能にした。しかし、純なる魂は卑しい肉の塊を枷にして回帰能わざる限り、啓蒙主義を唱えるリゴリズムは怪しまれるべきにあらずや。問題は、正当な疑念の為に真実を放棄すべきか。正にこのジレンマに陥った、天台宗の僧侶佐田介石(1818-82)をめぐって考えたい。『両儀玄覧』・『天文図解』についで江戸時代後半の麻田剛立の影響、『暦象新書』、『博物新編』・『地球説略』など内外ともに行われた天文学が口伝え、漢籍、オランダ語版、和書を通じて幕末の頃までかなり蓄積されていた。近世物理学の法則や概念、たとえば地球、遠心力、求心力、重力、加速、楕円などの語が日本列島に伝承・伝播され、議論された。佐田はそれらの論説を意識しながらも、地動説を否定した。地動説は欧州の天文学に代表される理論の結果の一つだが、畢竟西洋文明の論理性そのものを仰ぐ象徴でもあるとおもわれる。他方では理論に縁の薄い教義が付随したため、「國辱ヲ萬國ニ賣呈」する懸念を鎚破の理由とした佐田は近代の植民地支配やいわゆる自由貿易の列国体制の論調、各宗の布教活動の方便に敏感なあまり、科学の理論と経済的利害が混合している最中、二十箇条にわたって地動説の理論と格闘した。なかんずく、天は球いか、平たいか、この問いをも傍らで興味深く議論している。その論破方法と理論との関係を検討することを通じて、学問の神髄である理論の意義を見いだし、過去と現代のセオリーの理解に資することを念ず。

発表は日本語のみ   
場所:
国際日本文化研究センター内講堂(日文研ホール) (京都)
開場時間:
13:15
開始時間:
14:00
終了時間:
16:30
送迎バス:
往路:阪急桂駅西口より13:00~13:30の間に4台無料バス有。 復路:終演後すぐに阪急桂駅西口行き4台無料バス有。
申込み:
受講料 :
無料
申込み方法:
5月22日(金)必着にて、抽選により決定します。
① 申込方法:
ハガキ、FAX、E-mail でのみ受付
(郵便番号・住所・氏名・ふりがな・電話番号・催し物名を明記のこと)
1申込につき2名まで受付。(2人目の氏名等も必ず記入してください。)
3名以上のお申し込みは、無効とさせて頂きます。
② 申込 ・ 問合せ先:
〒610-1192
京都市西京区御陵大枝山町3-2
国際日本文化研究センター研究協力課
(TEL)075-335-2078
(FAX)075-335-2092
(E-mail)koenkai@nichibun.ac.jp

※備 考: 抽選結果は当落を問わず5月29日(金)頃にお知らせします。なお、定員に達しない場合は期日以後もお申込みを受け付けます。電話でのお申込みはお受けしておりません。
お申し込みの為お預かりした個人情報は、大学共同利用機関法人人間文化研究機構が主催する催し物のご案内のみに使用します。

ご注意:
自家用車でのご来場は、近隣への迷惑ともなるため、固くお断りしております。
但し、車椅子をご利用されている等、公共交通機関でのご来場が困難であり、自家用車でのご来場を希望される場合は、お申し込みの際にその旨をお申し出いただき、必ず事前に許可をお取り願います。
定員:
500名(抽選による)
主催:
日文研