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民謡研究の新しい方向

研究の内容

 昨今の民謡研究の対象はかつての詞章の収集や旋律型の分類から、概念や言説、正統性イデオロギーや保存団体の成り立ち、テクノロジーや学問の介入、産業化や政治へと移ってきている。そして民俗学、民族(民俗)音楽学だけでなく、文化史、文学史、社会学、文化政治学など諸学問が民謡に関するさまざまな局面を解明している。このような趨勢のなかで、本共同研究班は各領域の専門家を一堂に会し、民謡研究の現状を確かめ合い、今後の有益な対話を引き出すことを目的として立てられる。従来、民謡に関しては日本についての研究とそれ以外の研究とが向かい合わぬまま進められてきたが、この班では両者をつなぐ線や面を発見し、世界の音楽文化のなかで日本の民謡を考え、日本の音楽文化に入ってきた世界の民謡について考えたい。田舎の歌、民謡が、録音や楽譜や映像の形態をとって、元々の環境からはるかに隔たった地域や社会に移され、そこで別の演奏者、より大きな聴衆を獲得し、さらに別の旅をする。この文化移動が含む意味は何か。
 民謡の発見と応用はちょうど長短音階や西洋楽器やその編成の世界標準化と同じく、19世紀西ヨーロッパが提起した音楽文化の普遍モデルの一角を占めていて、荒っぽくいって民謡を発掘したり評価したり、作詞作曲に応用したり、都市生活にしかるべき場所を設けることは、ほとんどどこでも国づくり、町づくりに欠かせぬステップだった。このような今では常識となった俯瞰図を再検討するとともに、民謡概念を輸入・洗練したり、自ら演奏したり、楽譜に起こしたり録音したり、分析したり宣伝した個人や団体を調べながら、今述べたあらすじに反する事例、近代化以前の土着の音楽や思想との衝突、民謡と認可されなかった民の歌などについてメンバーが持ち寄り、民謡の概念と実践の多様性、分裂についても議論したい。
 世界各国で、民謡をインスピレーションにした都会の音楽、いわゆるポピュラー音楽が作られてきた。録音で知った遠い地の歌を新しい音楽語法やテクノロジーによって、再解釈するとこは、しじゅう行われている。この共同研究会では、テクノロジー、都会文化や高尚な知識界との媒介者、作曲とのつながり、都会や他文化への移動、産業化、都市生活や知識階層への媒介者をいろいろな事例から述べ、共通性と違いを対比させたい。

研究組織

研究代表者 細川 周平 国際日本文化研究センター・教授
幹事 鈴木 貞美 国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 石橋 純 東京大学大学院総合文化研究科・准教授
伊東 信宏 大阪大学大学院文学研究科・教授
井上 貴子 大東文化大学国際関係学部・教授
大和田 俊之 慶應義塾大学法学部・准教授
岡田 暁生 京都大学人文科学研究所・准教授
柿沼 敏江 京都市立芸術大学音楽学部・教授
倉田 量介 東京大学教養学部・非常勤講師
阪井 葉子 大阪学院大学・非常勤講師
島添 貴美子 富山大学芸術文化学部・講師
高橋 美樹 高知大学教育研究部人文社会科学系・准教授
滝口 幸子 城西国際大学・非常勤講師
竹内 有一 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター・准教授
武田 俊輔 滋賀県立大学人間文化学部・講師
長尾 洋子

和光大学表現学部・准教授

中原 ゆかり 愛媛大学法文学部・教授
藤田 隆則 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター・准教授
松村 洋 共立女子大学文芸学部・非常勤講師
三井 徹 金沢大学名誉教授
森 博史 第一三共株式会社・課長
横井 雅子 国立音楽大学音楽学部・准教授
輪島 裕介 国立音楽大学・非常勤講師
早稲田 みな子 東京芸術大学音楽学部・非常勤講師
片山 杜秀 慶應義塾大学法学部・准教授
国際日本文化研究センター・客員准教授
海外共同研究員 林 慶花 成均館大学校東アジア学術院・研究教授

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