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「心身/身心」と「環境」の哲学―東アジアの伝統的概念の再検討とその普遍化の試み―

研究の内容

 日本でも馴染みの深い、「天」「道」「理」「気」「性」「心」「情」「欲」「礼」といった、儒教思想上の主要概念は、元来、漢語のごく日常的な語彙でもあったものが、中国思想史の展開において、道家系の諸思想や道教・仏教などとの接触や競合のなかで、次第に洗練の度を加え、宋代に至り、とりわけ朱子学の体系の確立とともに、ほぼ最終的な定式化を見た。次いでそれが、その後の前近代の長い期間に亘って、中国はもとより、朝鮮・韓国、日本、ヴェトナムなど、東アジアの広汎な地域に深甚な影響を齎し、共通の知的な枠組みや世界観、概念上の語彙を提供した。
 こうした概念は、同時に、それらが強ち漢字で表記され、日常的な含意とも重複する部分が多々あるがために、道教や仏教における使用例との差異の確認はもとより、儒教思想の内部にあっても、時代や地域、思想家による異同が、動もすれば等閑視され、先入見によって、理解されがちな傾向が存していた。これは、江戸期の儒学をはじめとする、日本思想の理解や日中の思想文化の比較においても、大きな問題点であると言えよう。
 加えて、これらの語彙や概念は、上述したように、前近代の東アジアの知識人に共有される、一定の教養の基盤ともなっていたが故に、アリストテレスの哲学やキリスト教の教理、イスラームの諸概念などを理解し、説明する際にも、しばしば参照され、利用された。
 本研究では、西洋哲学や日本思想、インド哲学・仏教学、イスラームなどの専門家の知見をも活用しながら、近代的な思惟様式の再検証とともに、安易な比較研究を廃しつつ、現代において、東アジアの伝統思想を普遍化する方途を探ることを、最終的な目標とする。
 具体的には、朱熹(朱子)の思想体系はまた、万物を生み出す天地のはたらきであると同時に、人間の共感能力とも言える「仁」の概念を媒介に、「心身/身心」の相関を説き、人間の存在についても、周囲の環境である「天地自然」とも共生しつつ、そこに予め埋め込まれた有り様を前提とするなど、精神と身体、主観と客観の二元論など、近代以降の常識的・通俗的な見解とは、大いに異なる様相を見せる。翻って、現代哲学の分野でも、環境倫理学や身体論などに加え、現象学や科学哲学の影響下に生態学的な「心」の哲学といったことも論じられるようになった。本研究では、こうした流れにも棹さしつつ、共同研究の実を挙げることを目指したい。

研究組織

     
研究代表者 伊東 貴之 国際日本文化研究センター・教授
幹事 榎本 渉 国際日本文化研究センター・准教授
共同研究員 青木 隆 日本大学文理学部中国語中国文化学科・准教授
恩田 裕正 東海大学清水教養教育センター・教授
垣内 景子 明治大学文学部・教授
片岡 龍 東北大学大学院文学研究科・准教授
河野 哲也 立教大学文学部教育学科・教授
黒住 真 東京大学大学院総合文化研究科・教授
桑子 敏雄 東京工業大学大学院社会理工学研究科・教授
小島 毅 東京大学大学院人文社会系研究科・准教授
関 智英 東京大学大学院人文社会系研究科・博士後期課程
銭 国紅 大妻女子大学比較文化学部/大学院人間文化研究科・教授
高橋 博巳 金城学院大学文学部・教授
田尻 祐一郎 東海大学文学部・教授
陳 継東 青山学院大学国際政治経済学部・教授
土田 健次郎 早稲田大学文学学術院・教授
手島 崇裕 東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻・研究生
永冨 青地 早稲田大学創造理工学部・教授
西澤 治彦 武蔵大学人文学部・教授
長谷部 英一 横浜国立大学教育人間科学部/大学院環境情報研究院・准教授
林 文孝 立教大学文学部文学科・教授
松下 道信 皇學館大学文学部・講師
水口 拓寿 武蔵大学人文学部・准教授
横手 裕 東京大学大学院人文社会系研究科・准教授
李 梁 弘前大学人文学部・教授
末木 文美士 国際日本文化研究センター・教授
鈴木 貞美 国際日本文化研究センター・教授
ジョン・ブリーン 国際日本文化研究センター・教授
劉 建輝 国際日本文化研究センター・准教授
海外共同研究員 張 翔 復旦大学歴史系・教授/日本研究センター研究員(中国)
陳 健成 香港理工大学中国文化学系・研究助理(中国)
フレデリック・ジラール フランス極東学院・教授(フランス)

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