画面上部には、舟と二人の漁師が配され、網に掛かった人物を海中から引き上げようとする場面が表現されている。漁師の一方は櫓で磯舟を操り、もう一方が網を引いている。彼らの乗る舟の周りには白波が立ち、舟の中には、筵や魚籠、縄が描かれている。身体から放射状に光を放ち、結った髷も落ちた人物が、佐原藤十郎である。本文によると、盗賊に金品や上着を奪われて海に捨てられたとあり、画面では肌着のみを着る姿が描かれる。この肌着に守仏が付いていたことによる霊験であるが、その様子は絵画化されていない。
 
廣重美術館蔵

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