この画面構成は、他とは大きく異なっている。ここで中心を占めるのは人物ではなく、扁額中に吸い込まれるように舞い上がる米俵の一群である。霊験譚によれば、播磨灘を航行中、法道仙人の飛鉢が供米を要求するのを藤井某が断った。そのために俵が次々空中へと飛んで行く場面が、ここでは表現されている。画面の右下隅に小さく描かれているのが藤井某で、鉞を左手に持ち、俵を呼び止めるように右手を差し出している。また鉢巻を締めた船頭たちも、舞い上がる俵を押さえようとしている。扁額中の雲の切れ間からは一乗寺が覗き、上空には雲に乗って米俵を招く仙人の姿が描かれている。雁行のように編隊を組んで飛び去った俵の一群は、扁額中の法道仙人の左手へとつながっている。このように、霊験を絵画化した画面と一乗寺を描いた境内図を一つの視点から描くことで、空間を超越した神通力の威力を表現している。
 
廣重美術館蔵

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