画面下方で、蚊帳の中に座る下女の辰が、鉢と柳の枝を持って雲に乗る童子を見上げている。童子の身体より光明が放たれている。
 本文によると、主人が辰の寝所より光明が射すため、不思議に思い、辰を起こしてみたところ、「夢枕に穴太寺の使者が現れ、柳の枝で鉢の水を口に注いでくれた」と辰が言った。
 画面では童子の乗る雲が、辰の方から出ているのは、夢の中の表現である。蚊帳の中の辰は、鉢巻をし、今しがたまで病苦に堪えていたかの様子で、童子の出現に両手を開き驚いている。蚊帳を吊す紐が、扁額の金具に繋がっている。
 
廣重美術館蔵

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