画面中央の人物は、腰に火縄銃をかけるところから猟師であろう。次々と襲いかかる獣から赤子を守るため、左手に松明を掲げ、右手に鎌を構えて応戦している。
 山中に捨てられた籠の中の赤子は、後の源算上人である。
 霊験譚によると因幡国の山中に捨てられた赤子は、「鳥獣もこれを害せず」「村人が拾い育てた」という。長じた源算の善峯寺建立にあたっては、阿知坂神が木こりとしてあらわれ、また数万の猪・鹿があらわれて岩窟を崩し平地にしたという。この記述が画面を描写するにあたって影響をあたえているようである。したがって画面の主題をなす山犬と猟師との格闘は、霊験譚には見られない。すなわち阿知坂神の応現である雇人(=木こり)と「鳥獣もこれを害せず」という連想から豊国はこの霊験を絵画化し、画面に見せ場を作っている。
 
廣重美術館蔵

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