袈裟をまとい、右手に扇、左手に錦の袋を持ち、黒牛に乗るのが聖徳太子である。
 聖徳太子は、漂流する宿縁の尊像を淡路の海上で取り上げ、尊像の安置場所を探していた。画面では素足の老婆が鼻綱をとって杉の大木に案内している。毎朝紫雲に覆われると霊験譚に記される霊木は、既に切り株を見せている。廣重美術館蔵本と清水谷孝尚氏蔵本にはその切り株に観音の姿が浮かび上がっている。ところが紀三井寺蔵本と埼玉県立博物館蔵本にはない。切り口から昇る白い霊気は、扁額中の寺へと収束しつつ昇っている。
 
廣重美術館蔵

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