打敷に座すのが後白河院。物思いに耽っているかに見えるが、脇息に肘をつき、頭痛の苦しみに堪えているのである。
 歌舞伎『菅原伝授手習鑑』の斎世親王のような衣裳で、手に扇子を握っている。
 後白河院の右上には、柳の枝に影向する観音。柳が生えている根元は、髑髏をかたどっている。霊験譚によると、その髑髏は、岩田川に沈んでいた後白河院の前世にあたる熊野の蓮花坊の頭蓋骨である。髑髏の眼窩から今は大木となった柳が伸びる。構図は、後白河院と柳を対置しており、風にそよぐ柳の揺れと、頭痛の度合が相応していることを表現している。
 柳に観音が現れるという記述は霊験譚中には窺えないが、それを描くことで、のちの蓮花王院の本尊となったことを示唆している。
 
廣重美術館蔵

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