大津町の富豪に奉公する杉は、嘲笑をうけながらも三井寺の観音を熱心に信仰していた。ある時、町中の者が患った瘧という病に、杉だけはかからなかった。それゆえ、主人をはじめ下人たちも、仏力の尊さを知り、観音を信仰するようになった。
 画面は杉が天井の上にある薪を取りに行ったところ、梯子が壊れ石臼の上へまっさかさまに落ち、薪の束が次々と崩れる一瞬を描いている。
 左には、襷がけに前掛け姿の奉公人らしい女性が駆け寄る。
 『観音経』には「たとえ金剛山から墜落しても観音の力を念ずれば一本の頭髪さえそこなうことはない」という。そのことばどおり、杉の身は全く無事であった。
 
廣重美術館蔵

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