巡礼の旅に出た少女は、草鞋履きで「順禮」の文字のある笈摺を着ている姿で表されている。首からは、それぞれの霊場に納める巡礼札を下げている。漁師は、麻の葉襦に腰蓑を下げ、脚絆をつけている。
 画面は、波濤に押され磯に打ち上げられた少女、風に舞い上げられた編笠、櫂を持ち驚いて顎をつきだした漁師の三者を結ぶ、三角形の構図をとる。少女と漁師の対称的な姿勢や手の動きに、出会いがしらの出来事を思わせる表現が巧みに描かれている。
 両者の視線の先、画面上方には岡寺が描かれており、「今朝見れば露岡寺」という 御詠歌の一節を詠じただけで救われるという、霊場を扁額中に描いている。
 
廣重美術館蔵

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