藤井安基は、経机をまな板にして、鹿の足に短刀を入れようと構えている。煙は、仏具を薪として燃やす囲炉から立ち、安基の背後を横切る構図をとる。また煙には、火車と三匹の獄卒が影絵のように写し出されている。
 安基の視線は、地獄の使者とは反対の鹿肉を煮る鍋に注がれている。画面構成は、囲炉の火と火車の業火を対称的に配置させて、視覚的効果を狙っている。煙は、霊気とは明確に区別して表現されている。地獄の使者を呼んできた煙は、扁額の後ろに流れ、画面上方の扁額部分へと流れ込むことはない。ただし、火車の業火は扁額の縁にかかり、炎の盛んな様子をあらわしている。
 
廣重美術館蔵

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