百済国王后(ひやくさいこくわうのきさき)
 百済国王(ひやくさいこくわう)の后(きさき)ハ世(よ)に聞(きこ)えたる美人(びじん)にて国王(こくわう)殊(こと)に愛(あい)し玉ひしが何(いか)なるゆへにやいまだ盛(さか)りの齢(とし)にて白髪(はくはつ)となり種々(いろ/\)と良薬(りやうやく)を用(もち)ゆれども更(さら)に験(しるし)なかりしが或夜(あるよ)日本国(につほんこく)摂州(せつしう)勝尾寺(かちをでら)の観世音(くわんぜおん)ハ験(れいげん)あらたなるよしを夢(ゆめ)に見(ミ)玉ひて覚(さめ)るがいなや日本(につほん)の方角(ほうがく)を聞(きい)て一心(いつしん)に祈誓(きせい)し給へバ其夜(そのよ)のうちに雪(ゆき)のごとき頂(いたゞき)瑠璃(るり)の如(ごと)き艶(つや)となれバ国王(こくわう)はじめ百官(ひやくくわん)もよろこびてその報恩(ほうおん)にとて。閼伽器(あかき)。金鼓(きんく)。金鐘(きんしやう)の三種(ミしな)を周文徳(しうぶんとく)楊仁紹(やうじんせう)といへる両人(りやうにん)の商人(あきびと)に渡(わた)して日本(につほん)へ送(おく)りけれバ其品(そのしな)当山(たうざん)に納(おさ)まりて今猶(いまなほ)什物(じうもつ)となりてある事(こと)ふしぎの霊験(れいげん)なり

廣重美術館蔵

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