主馬(しゆめの)判官(はんぐわん)盛久(もりひさ)
 盛久(もりひさ)は平家(へいけ)普代(ふだい)の侍(さむらひ)なりしが八島(やしま)檀浦(だんのうら)の合戦(かつせん)にうち負(まけ)義経(よしつね)の手(て)に生捕(いけどら)れ鎌倉(かまくら)に下(くだ)されて土屋三郎(つちやさぶらう)に預(あづ)けられしが終(つひ)に由井浜(ゆゐがはま)にて誅(ちう)せらるゝに定(さだ)まりすでに舗革(しきかわ)の上(うへ)に坐(ざ)して法華経(ほけきやう)を一信(いつしん)に念(ねん)じけれバ太刀取(たちとり)の剱(つるぎ)段々(だん/\)に折(をれ)けるゆゑこのおもむきを御所(ごしよ)へ訴(うつた)へけれバ頼朝公(よりともこう)もふしきの夢(れいむ)を見(ミ)るものから急(いそ)ぎ盛久(もりひさ)を召(めし)て尋(たづ)ねけれバ予(よ)常(つね)に普門品(ふもんぼん)を信(しん)じ清水(きよミづ)の観音(くわんおん)を念(ねん)じ候の外(ほか)他(た)なしと答(こた)へけれバ頼朝公(よりともこう)仏力(ぶつりき)を尊(たつと)び一命(いちめい)を助(たす)けられしのみならず所領(しよれう)をあたへられたるかの念彼観音力(ねんびくわんおんりき)刀尋段々壊(とうじんだん/\ゑ)の経文(きやうもん)に能叶(よくかなひ)たる験(れいげん)なり

廣重美術館蔵

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