和泉式部(いづミしきぶ)
 西国(さいこく)三十三番(ばん)は御代々(ごたい/\)の天子(てんし)も御崇敬(ごそうきやう)ありて行幸(ミゆき)もありしなかに後白川院(ごしらかハのゐん)は三十三度(ど)御参詣(ごさんけい)遊(あそ)バさる此時(このとき)権現(ごんげん)の御神歌(ごしんか)に
 うろよりもむろに入(いり)ぬる道(ミち)なれバ 是(これ)ぞ仏(ほとけ)の御国(ミくに)なるべきト
 此外(このほか)に一首(しゆ)の哥(れいか)あり和泉式部(いづミしきぶ)参詣(さんけい)のおりふし麓(ふもと)にて障(さハり)のありけれバ
 晴(はれ)やらぬ身(ミ)のうき雲(くも)のたなびきて 月(つき)のさハりとなるぞかなしきト
 詠(えい)じて伏(ふし)たる其夜(そのよ)の夢(ゆめ)に
 もとよりもちりにまじハる神(かみ)なれバ 月(つき)のさハりは何(なに)かくるしきト
 権現(ごんげん)の御返歌(ごへんか)あるゆへに心(こゝろ)よく参詣(さんけい)を遂(とぐ)ふしぎの験(れいげん)ハ文学(もんがく)をはじめ挙(あげ)てかぞへ難(がた)し委(くハし)くハ予(よ)が観世音略伝図絵(くわんぜおんりやくでんづゑ)に出(いだ)せり

廣重美術館蔵

(C) 2001 International Research Center for Japanese Studies, Kyoto, Japan. All rights reserved