法道仙人 一名空鉢
 当山の千手観音は、法道仙人が天竺から請来した尊像で、その霊験は特にあらたかである。法道仙人は、常に観音の宝鉢を飛ばして人から供養を受けていた。大化元年八月、藤井某が宮中の米を船に積み、播磨灘を進んだ。この時、法道仙人の鉢が飛んで来て、供米を乞うた。藤井某が言うには、「これは宮中の米であって、勝手に施すことはできない。それでもこの米を取ろうとするならば、法道仙人は妖人で天下の邪敵である」と断ったところ、鉢が山へ帰るのに従って、千石の米俵も雁金が渡るかのように皆山へ飛んでいってしまった。藤井某は驚いて山に登り、謝ったところ、また残らず船に米が戻り、ただ一俵だけが南の川上に落ちた。それで、この場所を今、米堕村という。孝徳天皇は特に空鉢の法術を感心されて、伽藍の大施主になった。それ以来、ますます堅固なる道場となった。
 

廣重美術館蔵

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