聖徳太子
 この尊像は篋に入って淡路の海上に漂ってきたのを、聖徳太子が取り上げられ、肌身離さずお持ちになっていたものである。その後、四天王寺を建立されるための良材をお探しになっていた時、この地においでになった。この尊像を槲の木の枝に掛け、沐浴なさり、再び取りあげようとしたところ、磐石のように重くなって持ち上がらなかった。しばらくご祈念されたところ、夢うつつのうちのお告げに、「私とあなたは七世の宿縁で結ばれている。この地も縁があるので、ここを離れない」ということであったので、聖徳太子は、ますます尊んで、この尊像をこの地に安置しようと近所の老女にこのことをお話になった。すると老女は、「ちょうどよいところにおいでになりました。この辺りに杉の大樹があり、不思議とこの木は、朝ごとに紫の雲がたなびいて覆われる霊木です。急いでこれを用いてお造り下さい」と教えた。聖徳太子はお歓びになり、六角堂をその木でお造りになったのだが、ただ一本の杉の木でお造りになったのは、大変珍しいことである。
 

廣重美術館蔵

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