良弁僧正
  聖武天皇の勅命により、良弁僧正は、金峯山の黄金を掘ることを蔵王権現に念じていた。すると、蔵王権現が霊夢に出てきてお告げになるには、「この山の黄金は、弥勒がこの世に現れた時に用いるものであるので、勝手に取ることは許されない。他の場所を教えよう。江州勢田郡に一つの山があり、これは如意輪観音の霊地であるので、そこへ赴き祈念しなさい」そこで、良弁僧正は、教えの通りに勢田に行った。石の上で釣りをしている翁がいたので、「あなたはどなたですか」と尋ねてみたところ、「私はこの山の主で比良の神である。いかにもここは観音の地である」と教えて去っていった。良弁僧正は喜んで、そのほとりに庵を建て、如意輪観音の尊像をつくった。それからほどなくして、奥州から黄金の献上があったのは、不思議な霊験である。この時大伴家持が祝って詠んだ。
 「すべらぎの御代栄えんと東なる 陸奥山に金花咲」
 (聖武天皇の時代が栄えよと東国陸奥の山に金の花が咲いている)

廣重美術館蔵

(C) 2001 International Research Center for Japanese Studies, Kyoto, Japan. All rights reserved