聖宝僧正
 当山の開基である聖宝僧正は、中興の諸山の路を開き、川々に橋を渡し、また舟を浮かべて往来を助けるなど、数多くのことを行った。昔、役小角が熊野より大峯に入り吉野に出るという、山伏の峯入りを始めた。その後大蛇が出て人を悩ますので、峯入りすることが困難になった。そこで、聖宝僧正は、鉞でその大蛇を退治して大峯より熊野へ出た。これを逆の峯入りという。ところが、聖宝僧正は、蛇の毒に触れて悪瘡にかかり、苦痛に耐え難い状態となった。そこで、准胝陀羅尼を読誦したところ、観音の霊夢で「宇治郡笠取山に霊水がある。これは三世の諸仏の影向があり、醍醐経を加持しているので急いで行って沐浴せよ」というお告げがあった。聖宝僧正は歓喜して、教えの通りに沐浴したところ、すぐに悪瘡が治った。この霊験によってこの場所に御寺を建立した。醍醐というのは、その霊水に由来する号であるということである。
 

廣重美術館蔵

(C) 2001 International Research Center for Japanese Studies, Kyoto, Japan. All rights reserved