共同実験概要


■前文
 このコンテンツは、国際日本文化研究センターとBBCC(新世代通信網実験協議会)の共同実験として制作されたものです。


■実験実施機関
 国際日本文化研究センター、BBCC


■実験目的
 廣重美術館、神奈川県立歴史博物館、埼玉県立博物館、法楽寺、国際日本文化研究センターが保有する錦絵を高精細入力し、さまざまな解説とあわせて検索・閲覧できるシステムを開発する。
 画像表示にはSHD(高精細表示システム)を使用し、かつ全体のコンテンツをXML化。ブラウザ上で閲覧できるようにし、将来的にインターネットを利用して広く一般へ紹介していくことを目的とする。


■実験期間
    平成13年3月 〜 平成13年5月


■実験協力機関
  廣重美術館、神奈川県立歴史博物館、埼玉県立博物館


■このデータベースの趣旨
 今からおよそ160年前、全国に散在する百観音霊場を題材にした浮世絵が登場した。それがこのデータベースで紹介する[観音霊験記]である。
 葛飾北斎の[富嶽三十六景](46枚)や歌川廣重の[東海道五拾三次](55枚) [名所江戸百景](118枚)のような揃いものは、つとに著名である。が、この[観 音霊験記]の特色は、名所旧跡の景観だけでなく、戯作者万亭応賀(まんていおうが) (本名・服部孝三郎)による文章を収載する点にある。
 浮世絵師2代広重・3代豊国・国貞の共同作業によって描かれたこの大判錦絵は、安 政5年(1858)から順次刊行をみて巷間に流布した。
 この作品の魅力は、きわめて具体的な霊験を紹介しながら、札所本尊の由来を説くことである。現代人から見れば、いかにもにわかに信じがたい話が多い。絵師は、仏、菩薩の示現はもとより、異形・異類が跳梁跋扈する奇瑞をみごとに切り取り、ぼかしや空刷、雲母ふりかけなどの技法を用いて非現実のものを視覚化し表現している。
 この[観音霊験記]は、西国・秩父・坂東の三観音霊場(百観音)について各一枚とした都合百枚であったと考えられる。ただし残念ながら、坂東の18ヶ所についてはいまだ見いだされていない。遺品が確認できない札所については、梅堂國政の絵に作者を同じくする『坂東順礼三十三所目録』(国際日本文化研究センター所蔵)で補った。
 画面構成は、竪大判の上段に扁額を形どった境内図と御詠歌を記し、下段にはそれぞれの札所ゆかりの縁起を印刻して、霊験譚中の登場人物を芝居絵のごとく描いていることで、全作品に共通している。
 この作品に限らず、浮世絵のうち多色刷りのものは、錦絵と名付けられ、引き札(ひきふだ)とも称されて、歌舞伎の上演告知の役割を負っていた。現代ならさしずめ映画のポスターや雑誌を彩るグラビアが相当するであろう。扁額内部には寺院の景観をおさめ、下方には札所寺院の霊験譚が、歌舞伎の演目のごとく描かれている。
 わたしたちも、画師のたくらみにのり、[観音霊験記]を解読することで観音の霊地にまつわる伝説を旅し、仮想世界の巡礼を体験することができないだろうか。


 このコンテンツは、平成11−12年度、国際日本文化研究センターにおける基礎領域研究の成果である。本文を翻刻し、現代語訳を付した。江戸のマスメディアである錦絵を、立体的かつ有機的に把握することを目的として、錦絵や霊場・札名の解説と衣裳・絵の解説を試みた。また新旧の景観を対比する意味で、霊場の写真を付した。
 アーキテクチャはBBCCからの提案に沿ってコンテンツを作成し、デジタル化をはじ めとしてデータベース構築作業はBBCCがおこなった。
 このデータベースの公開が、内外の浮世絵研究の進展に寄与することを念願し、さらに未見の作品について情報を収集することができればと思っている。
 このデータベース作成に当たり、貴重な文化財・資料をこころよくご提供くださった、所蔵者のかたがた、お力添えいただいた関係者各位に心からお礼申し上げる。


                  国際日本文化研究センター
                      頼富本宏
■所蔵者
廣重美術館、神奈川県立歴史博物館、埼玉県立博物館、法楽寺、清水谷孝尚、白木利幸、井上隆雄、平幡良雄、国際日本文化研究センター


■制作協力者
  伊藤奈保子 (総合研究大学院大学)
  今枝久美子 (総合研究大学院大学)
  加藤善朗  (国際日本文化研究センター)
  上林直子  (大谷大学大学院)
  白木利幸  (密教図像学会事務局)
  那須真裕美 (龍谷大学大学院)
  西本幸嗣  (佛教大学非常勤講師)
  早川聞多  (国際日本文化研究センター)
  松村薫子  (総合研究大学院大学)
  森田登代子 (樟蔭東女子短期大学非常勤講師)
  山口直子  (奈良大学大学院)
  山田奨治  (国際日本文化研究センター)
  横谷一子  (佛教大学大学院)
  頼富本宏  (国際日本文化研究センター)(以上50音順)


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