第三十三番延命山菊水寺[小坂下]
埼玉県秩父郡吉田町大字下吉田1104

宗派=曹洞宗
札所本尊=聖観音
開山=八人の盗賊
開創年代=不詳


 菊水寺の参道前には、「大桜山長福寺」の大きな石柱が立っている。別当の長福寺は、長山賢道(1616年寂)が、桜井部落にあった長福庵を転用して創建した曹洞宗寺院である。やがて札所の管理権を掌握するようになり、文政三年(1820)本堂改築に際して札所本尊を本尊として祀った。
 本堂の欄間には、二枚の大絵馬が掲げられている。一枚は、二十四孝の一つ唐夫人を絵にした「孝行和讚」。もう一枚は、子供の間引きを諌めた「子孫繁昌手引草(子がゑしのゑづ)」である。また、境内には松尾芭蕉五十年忌に立てられた芭蕉塚もある。
 札所本尊の聖観音は、藤原時代の一木造であり、寄木造と一木造の室町時代の聖観音二体を脇侍としている。まわり観音と称する白衣観音坐像も伝えるが、こちらが長福寺の旧本尊である。札所本尊を本尊としたため、檀家を巡るようになったとされ、現在も一カ月交替で各家を廻っている。
 当寺は最初、八人峠と呼ばれるところに創建されたとされる。縁起によると、この峠には八人の盗賊が住み、通る人から金品を強奪していたが、行基菩薩の教えによって改心した。そして堂宇を建立し、行基作の観音像を峠に祀ったとされる。
 今の境内から約六百メートル南に小坂下集落があり、そこから八人峠にかかるあたりに、菊水寺跡とされる地がある。現在も、台座に天明五年(1785)の銘がある地蔵石仏や、菊水と呼ばれる井戸が残る。八人峠に祀られた観音は、長享二年(1488)までに小坂下に移され、第十七番札所となったものと考えられる。

朱鷺書房蔵

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