第二十九番笹戸山長泉院[石札堂]
埼玉県秩父郡荒川村上田野557

宗派=曹洞宗
札所本尊=聖観音
開山=慈恵大師
開創年代=不詳


 現在では、敬翁性遒(1571年寂)が創建した別当の長泉院本堂に、札所本尊が安置されている。長享二年(1488)当時、第九番札所だった笹戸観音は、長泉院の南方にある笹戸山の山頂に近い岩壁の下にあって、懸崖造の観音堂が建っていた。しかし、『松本家御用日記』によると、寛保三年(1743)正月の野火のため類焼し、堂地の岩山が焼き崩れて再建が困難なため、現在地に移されたという。
 『秩父回覧記』に記された縁起では、夜中光を放って『観音経』を読誦していた杉の霊木で、慈恵大師が観音像を刻んで安置したとされる。また、『秩父三十四所観音霊験円通伝』によると、凡僧とは見えない巡礼十余人が、麓の里人をともなってこの山に登り、岩洞の口に茂った小笹を押し開くと、なかに慈恵大師作の観音像が祀られ、その上の巨岩を開くと金色の阿弥陀如来が坐していた。里人は、堂宇を建立して観音を安置し、阿弥陀如来を奥の院の本尊としたという。
 巡礼十余人は、秩父巡礼開創十三権者を指すと思われる。十三権者の一人、播磨国書写山の性空上人は、文暦元年(1234)秩父巡礼開創の折、その記念として当寺に石札を納めたという。本尊の前には、その時のものとされる黒色長方形の石が安置されており、石札堂とも称している。文字の読み方には諸説があるが、「石札定置巡礼」とするのが一般的である。
 本堂正面の欄間には、咲き誇る桜を描いた『法楽和歌』の板額を掲げている。葛飾北斎が『北斎燈火』の下図に描いたものとされ、文化八年(1811)と記されている。
 

朱鷺書房蔵

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