第一番誦経山四万部寺
埼玉県秩父市大字栃谷418

宗派=曹洞宗
札所本尊=聖観音
中興開山=幻通上人
開創年代=不詳


 秩父巡礼の札所は、西国巡礼や坂東巡礼の札所のような大寺院ではなく、小規模の観音堂が大半である。第一番札所の四万部寺も、格式ばったところがなく、気負いなく巡礼を始めることができる。
 行基菩薩が当地に巡錫して、聖観音を安置したのが最初と伝えられる。時を経て永延二年(988)、金色の翼の霊鳥によってもたらされた観音のお告げにより、播磨国書写山円教寺の性空上人が、四万部の経典を読誦した。上人が寛弘四年(1007)三月十三日に没した後、その遺命にしたがって、弟子の幻通が当地に赴いて堂宇を建立し、供養塚を築いたという。当初は、現在地より東北に位置する四万部山の東面中腹に、観音が祀られたと思われる。長享二年(1488)当時は第二十四番札所となっていたが、江戸開府にともなう番付変更に際して、江戸より飯能を経て最初に打つことができる札所として、第一番となった。
 大宮郷の広見寺の端山守的(1555年寂)によって、曹洞宗の妙音寺が創建されると、元禄十年(1697)その境内に観音堂を建立し、札所本尊を引き込んでいる。妙音寺の本尊は地蔵菩薩だったが、後に札所本尊の聖観音を本尊とした。さらに近年、寺号を四万部寺に改名することによって、名実ともに別当寺が札所となった。
 簡素な山門を入った境内には、観音堂をはじめとして、八角輪蔵を中央に置く特殊な造りの施食殿など、第一番札所としての寺観が整っている。常に多くの巡礼で賑わっており、道中の無事を祈願して、第二番札所へと旅立っていく。

朱鷺書房蔵

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