画面を構成するのは、合掌して中空に浮かぶ僧形の男性、両手をあげて驚く男性、右手で僧を指し左手で「甘露法雨」と記された立て札を持つ男性の三者である。これら三者が、画面左上端から右下端を結ぶ対角線上に配されている。
 画面右下端、頭に鉢巻を絞め右肩を肌脱ぎにする男性が持つ札は、旱魃に苦しんでいた際、現れた僧の指示に従って書き付けたものである。
 彼の視線と右手の指先が示唆する先には、蓑笠(すげがさ)を着けた僧が描かれている。彼は霊験譚の記述によれば身の丈六尺の法師であり、岩を杖で突いて水を沸き上がらせたとある。画面左下、吹き上がる水と共に立ち昇った霊気の中に描かれ、この僧の笠は、あたかも頭光(ずこう)のように表現されている。また当該画面において、僧形の男性の肩より上、頭光および霊気が扁額部に掛かっている。すなわち、僧形の男性は当該画面に登場する人物の内、最も手前に描かれていることが確認できる。
 水が吹き上げる岩の割れ目に視線を注ぐのは、画面中央、口を開き右足を上げて驚きの様相を呈している男性である。この男性は、画面右下に描かれた男性とともに、この土地の住人であると考えられる。また、彼の足許には三つ巴が記された太鼓と鉦鼓(しょうこ)が置かれている。霊験譚中に直接の示唆はないが、雨乞いのために打ち鳴らしたものだとも考えられる。彼らの背後には、一組みの簑笠が配されている。これは、雨の暗喩であるとも推測することができる。
 当該画面は、僧の力によってこの土地が水に恵まれた、その場面を絵画化したものである
廣重美術館蔵

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