当該画面は他とは異なり、霊場そのものが、画面の主題となっている。
 扁額中には札所の縁起があり、下部の画面中、雲の部分に霊験譚と奉額が記されており、画面全体には山中にある諸堂が描かれている。これと類似した画面構成をとるのは、秩父第二十番である。『百番観音霊験記』の霊験譚の錦絵部分は、豊国・国貞によって描かれているが、この画面は扁額部を描く広重の手になるものである。
 青と赤と黄色、三色の雲形の模様が扁額中に描かれる。この点も、秩父第二十番に類似している。
 画面に登場するのは、石段を登ろうとしている三人の男性である。烏帽子(えぼし)を被り、左手に扇子を持つ男性は、札所名と同様に名前の指示があることから、霊験譚の表題に掲げられる秩父次郎重忠であることが判る。画面左下端の男性二者に関しては、霊験譚の記述による指摘は見受けられない。
廣重美術館蔵

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