画面を構成するのは、膝を突いた甲冑姿の男性と、竹杖を手に立つ白髪の女性の二者である。
 画面右方の男性は、霊験譚の表題に掲げられる、畠山基国の家来の内山源蔵である。また画面左方の女性は、霊験譚の記述によれば源蔵の年老いた母親であることが判る。
 源蔵は左手を膝に置き、右手を差し出している。大鎧(おおよろい)に太刀を佩き、打刀(うちがたな)を差して、戦に赴く姿で描かれている。また画面手前下の中央には、守仏を収めることになる兜が置かれている。一方の源蔵の母は、白髪を玉結びにした姿で表現されている。彼女は右手で巻物を差し出し、左手で杖を握っている。
 画面中に巻物が描かれるものとして、西国第二番、西国第六番、西国第十番、西国第十六番、秩父第一番、秩父第三十三番が挙げられる。これら総てが、霊験譚の記述による直接の指摘、もしくは内容からの推測によって、経巻であることが確認できる。しかし、当該画面に表現される巻物は、霊験譚によれば守仏であり、当寺本尊の御影(みえ)であるとしている。
 当該画面は、出陣にあたって老母が源蔵に守仏を渡すという、霊験譚中の一場面を絵画化したものである。
廣重美術館蔵

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