画面を構成するのは、年老いた僧形の男性、袖で顔を覆った女性、そして犬頭人身の異形の者の三者である。
 画面右端、網代笠(あじろがさ)を背に掛け、右手に応量器(おうりょうき)、左手に杖を持ち、首から袈裟文庫(けさぶんこ)とおぼしきものを掛ける托鉢姿の人物は、行脚の僧である。画面左端の女性は、富裕でありながらも吝嗇な、讃州のある農家の妻女であると考えられる。また画面下中央の異形の者は、犬の姿に変じた、この農家の息子である。息子の前に置かれた縁の欠けた器は、僧への施しを入れた犬の碗であり、彼の帯の一端は犬の尾のように垂れている。
 当該画面は、罪を悔いて嘆く親に対して、僧が因果を示して童子堂へ詣でるように諭す場面を絵画化したものである。
 また、霊験譚を描く画面の内側に、改め印が記されている。通常、改め印は画面外、左右脇の何れかに記されるものである。内側に記される例は、秩父三十四所の内、当該画面以外には見られない。これに対して坂東三十三所には、錦絵の確認が可能なものの中でも、第六番、第八番、第十五番、第十六番に見られる。
廣重美術館蔵

(C) 2001 International Research Center for Japanese Studies, Kyoto, Japan. All rights reserved