画面を構成するのは四者。馬上から鏑矢を射かける男性と、三体の異形の者である。
 冠を付けて太刀を佩き、白馬に跨った男性は、霊験譚の表題に掲げられる八幡宮である。八幡宮の携える矢は、扁額部よりも手前に描かれている。また、騎乗の白馬は雲に乗っているが、霊気あるいは雲の上の乗騎に跨る構図は、西国第九番、坂東第二十三番にも見られる。
 三体の異形の者は、霊験譚の記述によれば観音像を制作した際、大いに暴れた当地付近の邪神や悪魔である。画面下左方、右手に三叉戟(さんさげき)を持ち、左手を突き出した邪神は、左胸を射抜かれている。また画面下中央の邪神は、中国の柳葉刀(ようりゅうとう)に似た刀を右手に持ち、左肩に矢を受けている。画面右下端の邪神は、同様の刀を右手に持ち、左手を突き出して、仰退けになっている。
 八幡宮と二体の邪神は、画面左上端から右下端を結ぶ対角線上に配されている。四条の煙のうち三条は、画面左上、八幡宮へ向かって立ち昇っている。またこの煙は、矢に貫かれて落ちていく邪神たちから生じているように表現されている。
 当該画面は、八幡宮が神鏑によって邪神を征伐するという、霊験譚の中の一場面を絵画化したものである。
廣重美術館蔵

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