画面を構成するのは、風に煽られた傘を左手に持ち、右手で着物の裾を押さえる女性と、右手に鍬を持つ男性、そして画面上部に描かれた竜である。この竜は、霊験譚の記述によれば、弘法大師の祈願により神泉苑(しんせんえん)から小竜が天へ昇ったのと同時に、当地の盤石を割って現れたという大竜である。竜は黒雲からその前足と尾を覗かせる形で表現されている。
 画面中央より下には、男女二者が描かれている。
 女性が持つ傘は裏向きに捲れ上がり、首を竦め、裾も乱れて襦袢が覗いている。彼女の周囲には、紙が吹き上げられて宙を舞っている。雨の中、傘を差さずに裾を絡げて走っている最中とおぼしき男性は、口を開けて左手を大きく広げて驚きの様相を呈している。画面右上部、西国第七番と同様に扁額よりも手前に描かれた笠は、男性が被っていたものが風で飛んだものであろう。これらの描写は、風の激しさを表現したものである。
 当該画面には、白い線として雨が描かれている。この他に画面中に雨が描かれたものとして、西国第六番がある。その画面では、雨は灰色の線で表現されている。また稲妻が画面左上端から描かれているが、先の西国第六番、及び西国第十六番にも稲妻の表現がある。しかし、三画面ともに異なった形状で描かれている。
 上部に竜、そして風雨の激しい有様が描かれた当該画面は、霊験譚の後半部分を絵画化したものである。
廣重美術館蔵

(C) 2001 International Research Center for Japanese Studies, Kyoto, Japan. All rights reserved