画面を構成するのは、馬に乗る男性、その馬を引く男性、そして薄い色彩で描かれる三体の異形のものである。
 画面手前の左方、左手で編笠(あみがさ)を押し上げる旅装の男性は、近江国の商人である。画面手前の右方の男性は、手拭いを頬被りにし、体に筵を巻き付け、右手に替えの草履を堤げる。馬子とおぼしき彼に関して、霊験譚中には特に記載はない。彼の手拭いは、廣重美術館本では無地の白色であるが、国立国会図書館本では、白地に青の文様が描かれている。腹掛けをした馬は、自ら歩みを止めているように見ることができる。馬を引く男性の視線は商人へ、商人の視線は前方の異形のものへと注がれている。
 画面奥、あたかも左端の一体の話を聞くような形で描かれている三体は、湯尾峠で話を交わしていた疫神である。これらは、主線の枠取りの中をぼかしで着色することで表現されている。
 この画面は、湯尾峠で近江国の商人が疫神たちに遭遇する場面を絵画化したものである。
廣重美術館蔵

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