画面を構成するのは、右手に如意(にょい)を持った僧形の男性と、大小の刀を差した武家風の男性である。
 画面中央の右方、白髭をたくわえ厳しい表情を浮かべる僧は、当寺の本尊の化身である。また画面中央の左方、刀の柄に手を掛け、膝立ちの状態にある男性は、摂津国から移り住んだ儒者である。また彼の髪型は、月代を剃らずに頭の後部に小さな下げ髪(さげがみ)を作る、いわゆる儒者頭と呼ばれるものではない。 
 儒者の袴の裾は右は膝上、左はふくらはぎまで捲れ上がり、彼の剣幕を表現していると考えられる。彼の脇、画面左端には、書物が開かれた書見台と幾冊かの書物が収められた帙(ちつ)が置かれている。
 霊験譚の記述によれば、仏教を誹る儒者の許に赴いた老僧が、儒者の言葉を返すと、彼は怒って刀に手を掛けた。斬り掛かろうとする儒者の手許を、僧が如意で打ったとの記載があり、当該画面はその場面を絵画化したものであると考えられる。
廣重美術館蔵

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