画面を構成するのは、踊る二人の男性と一人の女性、編笠(あみがさ)を目深に被る僧形の男性である。
 画面手前で踊る人物は三者。右袖を肌脱ぎにし、画面正面に対して左横顔を見せる男性、肌着もずらせて右肩を露わにし、画面正面を向く男性、左袖を肌脱ぎにして御歯黒をした、画面正面に対して右横顔を見せる白髪の女性である。彼らは、霊験譚の記述によれば当地の里人であり、訪れた旅の僧の問いに応じて、西善寺のご詠歌に節を付けて唄い踊っている。
 画面左端の階段趾とおぼしきところに腰を下ろし、手甲・脚絆を着け、杖を両手で握る旅装の僧が、里人に問いを発した人物である。また彼は、霊験譚中に円通大士(えんつうだいし)、すなわち観音が姿を変えて現れたものであるとの記述がある。
 彼ら里人は、各々手に団扇と棒を持っている。彼らは、手にした団扇を、過去おこなっていた唄念仏(うたいねんぶつ)に用いていた太鼓に、棒を太鼓のばちに見立てているのであろう。三つの団扇は同一線上に、三本の棒は平行に描かれており、また三者ともに口を開き、片足を上げる動作を行うという相似した動きで、表題に掲げられている唄念仏の情景が、霊験譚の記述に沿った形で絵画化されている。
廣重美術館蔵

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