行脚僧(あんぎやそう)寳明(ほうめい)
 宝明(ほうめい)諸国(しよこく)をめぐりて当山(たうざん)に来(きた)りし所(ところ)難病(なんびやう)によつて蹇(あしなへ)けれバ余義(よぎ)なく起(おきふし)に西方(さいはう)を念(ねん)じ飛行(ひぎやう)の鳥(とり)を見(ミ)てうらやみ終(つひ)に七年(なゝとせ)の春秋(はるあき)を送(おく)りしが一日(あるひ)弘法大師(こうぼうだいし)勅(ちよく)を受(うけ)て諸国(しよこく)を経歴(けいへき)する砌(ミぎ)り爰(こゝ)に来(きた)りて宝明(ほうめい)が蹇(あしなへ)て当国(たうごく)の順礼(じゆんれい)かなハざるをあハれミて大士(だいし)の像(れいぞう)を刻(こく)して与(あた)へ玉ふがゆへ宝明(ほうめい)歓喜(くわんぎ)踊躍(ゆやく)して是(これ)を本尊(ほんぞん)に安置(あんち)しけれバ宝明(ほうめい)をもつて当山(たうざん)の第(たい)一祖(いつそ)とす宝明(ほうめい)の蹇(あしなへ)たるハ全(まつた)く救世大士(ぐせだいし)の利益(りやく)にて 弘法(こうぼう)に値偶(ちぐう)させしめんが為(ため)なれバ不祥(ふじやう)をもつて吉事(きちじ)をまねぎし験(れいげん)奇(き)なるかな不思議(ふしぎ)なるかな又(また)当山(たうざん)に誓願石(せいぐわんせき)といふ石(れいせき)ありその因縁(いんえん)長(なが)けれハ爰(こゝ)に略(りやく)す

廣重美術館蔵

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