飛行(ひぎやう)の尊像(そんぞう)
 当寺(たうじ)の境内(けいだい)は龍宮(りうぐう)涌出(ゆしゆつ)の場(れいじやう)にて堂舎(だうしや)および歩行(ほこう)の地(ち)ハ大概(たいがい)一枚(いちまい)の盤石(ばんじやく)にてさらに塵土(ぢんど)をふまず本尊(ほんぞん)ハ弘法大師(こうぼうだいし)の作(さく)にて京洛(ミやこ)より飛(とん)で爰(こゝ)に移(うつ)り玉ひし尊像(そんぞう)にまし/\てもつとも験(れいげん)あらたかなり或年(あるとし)天下(てんか)大(おほい)に旱(ひてり)して万民(ばんミん)の飢渇(きかつ)まのあたりなれバ大師(たいし)に勅(ちよく)あつて祈(いの)らせられしに大師(だいし)摧肝膽(かんたんをくだき)て祈(いの)りけれバ神泉苑(しんせんえん)より小竜(しやうりう)天上(てんじやう)する同時(どうじ)に此地(このち)の盤石(ばんじやく)二ツにわれて大竜(たいりやう)雲(くも)を起(おこ)して発(はつ)しけれバ忽(たちま)ち大雨(たいう)降(ふり)そゝぎて人畜(にんちく)草木(さうもく)も蘇生(よミがへ)り五穀(ごこく)豊饒(ぶによう)せしハ偏(ひとへ)に大師(だいし)の丹精(たんせい)と観音(くわんおん)の利益(りやく)なり
 

廣重美術館蔵

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