本間孫八(ほんままごはち)
 当寺(たうじ)の大檀那(おほだんな)孫(まご)八ハ其家(そのいへ)富貴(ふつき)なれどもかゝる辺鄙(へんび)に生(うま)れて和歌(わか)に道(ミち)を知(し)らされバこれを深(ふか)く悲(かな)しみて此堂(このだう)に通夜(つや)をし和歌(わか)の道(ミち)を祈(いの)りければふしぎと旅僧(たびそう)来(きた)りて共(とも)に通夜(つや)をし終夜(よもすがら)歌(うた)の奥儀(おうぎ)を語(かた)り又(また)片岡山(かたおかやま)の化人(けじん)の歌(うた)を講(こう)じなぞして暁(あかつき)にハかき消(け)すやうに失(うせ)けるゆへ孫(まご)八旅僧(たびそう)ハ救世大士(ぐせだいし)の応化(おうげ)なることを知(し)つて則(すなハち)語歌堂(ごかだう)と名(な)づけぬまた信濃国(しなのゝくに)の綿(わた)づミの老女(ろうぢよ)娘(むすめ)を魔鳥(まちやう)に捕(とら)ハれて心狂(こゝろくる)ひながら此本尊(このほんぞん)を祈(いの)りけれバ二十八部衆(ぶしう)に命(めい)じて取(とり)反(かへし)しあたへ玉ふがゆへ俗(ぞく)に子反(こがへし)の観音(くわんおん)ともいへり
 

廣重美術館蔵

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