秩父重忠の臣 本多次郎親常
 秩父重忠は、霊夢のお告げによって当山において猟をしていたところ、遥かな梢に鷲が巣に籠っているのを見つけて、親常に命じて射させた。矢は一本もはずれることはなかったが、当たるといえども、全てはねかえった。重忠は不思議に思い、その巣を取り下ろさせて見ると、巣の内に聖観音の尊像が光り輝いていらっしゃった。
 重忠は霊夢を見て、里人にこの像を拝ませると、「昔、当山に寺院があり、行基が彫刻した観音の霊像があったが、承平五年(935)、相馬の平将門の兵乱によって国中の神社仏閣が破壊された」と老人が物語ったので、重忠は、「なんと有り難く、不思議なことだろう。これこそ、その尊像でいらっしゃる」といった。重忠はますます観音を信じて、急いで御堂を建立した。それより重忠の一門は皆帰依をしたので、その霊験はまた鏡に向かうが如くあらたかになった。また当山の奥の院に、重忠の馬繋、親常の矢の跡などという旧跡があるが、枚挙にいとまがない。

廣重美術館蔵

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