龍女
 人皇四十四代元正天皇の時代、この山の麓の淵より龍女が現れ、当山の頂へ夜ごと竜燈を捧げるので、人々は不思議がり、また尊んで、必ずこの峰に霊仏がいるのだと仰ぎ慕っていた。
 歳月を経て十人余りの順礼が訪れて、人々にこの山の案内をさせると、一つの岩屋の口に小笹が生い茂り、さながら戸を閉ざすようであった。衆僧が押し開き見ると、観音の像が堂々として立っておられた。即ち、今の本尊がこの仏像である。熊野権現をはじめとする同行十人余りの順礼は、尊い権化でいらっしゃった。
 なお、後に当山の住職の静山和尚が、本尊の霊験により命が助かったことは、『円通伝』に詳しいので、ここには記さない。

廣重美術館蔵

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