幻通比丘
 この寺の本尊、聖観音は行基の作であり、霊験は殊にあらたかでいらっしゃる。寛弘四年(1007)三月十三日、書写山において性空上人が弟子幻通に告げていうには、「武蔵国秩父に行基による開基の観音があるけれども、東国に知られる機会がないまま衰退に至った。このことを観音が霊鳥を使者として私に示された。こういうわけであるから、私が四万部の経典の文を誦したいが、もはや臨終に及んでいるので志をはたせない。おまえは、私の遺命をたがえずに秩父に行き、人々を教化済度し、霊跡の復興に勤めなさい」という。その後、幻通はこの地に赴き四万部の供養塚を建て、人々に仏の教えをひろめた。すると、仏の功徳を授かる者が多かったので、今も参詣をする者が絶えない。寺号は供養塚の名にちなみ、四万部寺という。

廣重美術館蔵

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