第一番大蔵山杉本寺(杉本観音)
神奈川県鎌倉市二階堂903

宗派=天台宗
札所本尊=十一面観音
開山=行基菩薩
開創年代=天平六年


 萱葺きの仁王門を入り、同じく萱葺きの本堂まで、鎌倉石で作られた石段を上る。多くの参拝者が長い歳月踏みしめたため、かなり磨滅しており、表面は青々と苔むしている。すべりやすく、危険になってきたので、現在では新しい石段が利用されている。
 杉本寺は、鎌倉最古の名刹とされる。行基菩薩が当地を巡錫した際、柏に十一面観音と二十八部衆を感得し、この木をもって本尊を刻んで、二階堂観音院を創建した。さらに仁寿元年(851)、慈覚大師が江ノ島に参詣した折に、天竺から小動(こゆるぎ)の浜に流れついた香木で十一面観音を彫刻して安置。寛和二年(986)には、北野天神の神託によって、恵心僧都も同じく奉安している。
 以来、一つの厨子のなかに、三体の十一面観音が祀られるようになった。三体とも、ほぼ等身大の立像で、そのうち慈覚大師および恵心僧都の作とされる二体は、鎌倉時代の制作と考えられており、国の重要文化財に指定されている。
 文治五年(1189)のこと、隣家の失火のため、全山が炎に包まれた。時の住職浄台法師は、本尊を救い出すため、本堂に入ろうとしたところ、呼び止める声が背後から聞こえた。振り返ってみると、大杉の根元に三体の観音が光明を放って立っていた。歓喜した法師は、後に堂宇を再建。それ以降、杉本の観音と呼ばれるようになったという。
 境内には、「奉納十一面杉本観音」の幟が並んでおり、札所の雰囲気が漂う。素朴なたたずまいのなかにも、凜とした空気が流れており、これから始まる巡礼の旅立ちにふさわしい霊場である。

平幡良雄氏蔵

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