この画面を構成するのは二者。画面左方に立つ旅姿の男性と、画面右方に座る女性である。
 霊験譚の記述によれば、道中合羽を着て右手に笠を持つ男性は、武蔵国多摩郡に住む木鉢作りの某である。彼は坂東順礼を果たせないままに死んだが、四十九日に家へ戻って来て、秩父の僧と順礼をしたと告げたという。画面右下方の女性に関する記載はないが、木鉢作りの男の妻であると推測することができる。彼女は板間で左膝を立て、右手を突き出し顔を上げて、驚きの様相を呈している。左手で持つ位牌は、木鉢作りの男のものであろう。男性と女性の両者が、画面左上端から右下端を結ぶ対角線上に配され、視線もこの線上で交わされている。
 当該画面は、観音の霊験によって順礼を遂げた男が、家へと戻った場面を絵画化したものである。
白木利幸氏蔵

(C) 2001 International Research Center for Japanese Studies, Kyoto, Japan. All rights reserved